「赦すこと」

                                                               ASさん

日本に留学し、医学を学んでいたスリランカ人男性と出会い、結婚。

教師をしていた私が経済を担い夫の勉強を支えた。しかし、夫の事情でハワイに移住後、子どもが生まれ、

私が育児に時間を取られるようになると、夫はしだいに不機嫌になってことばの暴力が始まった。

途方に暮れた私は、結婚の時に夫がくれた唯一のものであった聖書が読みたくなり、開いてみた一一

苦しみの中で聖書と出合ってから「すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。

わたしがあなたがたを休ませてあげます。(マタイ11:28)と言ってくださったイエス様の御前にすべて抱え込んでいた重荷を下ろして休みたかった。かたくなな心を赦していただき、その御跡を慕い、ついて行きたいと心から思った。そして神の完全な基準であるイエス・キリストによって、自分自身を測らなければならないことを知った。「わたしの目には、あなたは高価で尊い」(イザヤ43:4)とイエス様が言ってくださるなら、子どもたちのために、

もう1度生きてみようと思った。そして私は教会に行くようになり、洗礼を受けた。一一

 

 アメリカに移住後、夫の暴力はもう言葉だけではなくなり、ごみ箱を逆さにして私の頭にかぶせてきたり、

教会用にサンドイッチを作って出かけようとすると「自分から逃げるのか」と言ってそれをわしづかみにして顔にぶつけてきたりして、精神に異常をきたしているのではないかと思うほどの荒れようだった。一一

結局、長男と長女が大学生、次男は高校生という最悪の時、離婚の訴訟となってしまった。

 

 その後いろいろな苦難の中にあったが助け手が常に与えられ守られてくることができた。

一一アメリカを去る何日か前、ニューヨークで弁護士をしている娘から電話があった。

彼女は悲しそうな声で話し始めた。「ママ、老後を日本で暮らすことは反対しない。だけど、どうしても言いたいことがある。ママが人生の中で犯した最も大きな罪はあの男の遺伝子を残したことよ。

あの男の遺伝子を半分抱えて生きていくことがどんなに大きな十字架を背負っていかなければならないか考えたことがある?あの男の遺伝子を残したくないと思えば子どもを産むことはできない。ママは無責任よ。」一一何日かして落ち着いてから、私はカードを送った。「貴女が指摘したことは正しい。だけど、もう起きてしまったことを消しゴムで消すことはできない。両親の細胞を使って神様ご自身があなたを創造なさったのです。貴方は美しく、頭が良く優しい心をもった女性に成長してくれました。貴方はいつも私の誇りでした。そして誰よりも神様に喜ばれ、祝福された子どもです。幸せを作り出せる人になってください。心から、貴方を大切に思っている母より」と書いて送った。何も返事は無かった。

 しかし、日本に帰ってしばらくしてから、ニューヨークから誕生日と母の日に花が届くようになった。娘からだった。私が悪戦苦闘を強いられている間、神様は沈黙を保っておられるように思っていた。

しかし、すべて私の必要を知っていてくださり、たくさんの助け人を送ってくださり、いつもそばにいて一緒に苦しみ、泣き、喜んでいてくださったのはイエス様だけだったのだ。

苦しみに遭ったことはすべて良かったのである。彼が去ったことで抑圧から開放され、家族それぞれが、神様から自分に何が与えられているか深く考え、行動する自由が与えられたのだ。そして自分らしく、誰にも支配されない喜びを感謝しながら生きる人生を与えられたのだ。

 一一「今を健全に生きるためには、過去に起きた怒りを、過去に手放さなければなりません。

方法は1つだけです。赦すことです。過去に自分を傷つけた人たちに対して恨みを抱き続けるなら、あなたはいつまでも彼らに傷つけられることになります。彼らが赦されるに値するからではなく、自分の心の回復のために赦すのです。」(リック・ウォーレン著『人性を変える力』より)

 

「お互いに親切にし、心優しい人となり、神がキリストに置いてあなた方を許してくださったように、あなた方も互いに赦し合いなさい。」 エペソ4:32