クリスマスによく話される冬の寒い日の物語に、トルストイが書いた「靴屋のマルチン」のお話しがあります。
「靴屋のマルチンは妻を亡くし、一人息子も病気で死んでしまいます。
『本当に神様がいるなら、こんな私の所に来てください。』と祈りました。
するとある日、夢の中で『マルチン!明日、あなたの所に、わたしが行きます。』という声、イエス様の声を聞きます。
マルチンは朝起きるとさっそく、イエス様をもてなす準備をいたします。
でも、イエス様はなかなかマルチンの家にやって来ません。
外をながめると雪かきをしているステパンじいさんが寒そうにしています。
それでステパンじいさんを家に招いて温かいお茶をごちそうします。
するとステパンじいさんは『マルチンさん、今日は私のお腹も心もあなたの愛の心で温まりましたよ』と言われます。
また昼頃外を眺めていると、赤ちゃんを抱いて寒そうにしている貧しい母親がいます。するとマルチンはかわいそうに思い、家に招きます。そして暖炉のそばで温めます。そして母親からいろいろと身の上事情を聞きます。
夫が亡くなって今、この赤ちゃんを抱えて、ミルクをあげられなくて困っていることなどを聞いて、イエス様に用意しておいた昼食のパンとスープをご馳走し、帰る時には自分の奥さんが使っていたコートを差し上げます。
すると貧しい母親は帰る時『マルチンさん、今日は身も心も温まりました。
あなたの愛の心を、ありがとうござます。』と言われました。
それから夕方になり、外を眺めていると、リンゴを盗んだ少年が捕まって、叱られています。
マルチンはそれを見て、すぐ外に飛び出していきました。マルチンは仲裁をしてあげ、少年のリンゴ代金をおばさんに払ってあげます。少年もおばさんに『ごめんなさい』とお詫びします。それから『マルチンさん、今日は本当にありがとうございます。ボクはお腹がすいて、ついリンゴを盗んでしまいました。これからはしません。なんだか今日はボクの心は晴れて、温かくなりました。』と言われました。もう夜になりました。
イエス様は来ませんでした。
マルチンは夜寝る前に、聖書を読み、お祈りをしていました。
『イエス様。あなたは今日、私に会いに来ると言われたではありませんか。』すると光がまわりを照らし、声がしました。『マルチン。今日わたしは、あなたに会いに行きましたよ。
朝、ステパンじいさんにお茶をごちそうしてくれたね。
昼には、赤ちゃんを抱いて寒そうにしていた貧しい母親にパンとスープとコートをくださったね。
夕方、お腹がすいてリンゴを盗んだ少年に、代わりにお金を払ってあげたね。
そう、あれは全てわたしに会ってくれて、わたしにしてくれたことなんだよ。』
クリスマスに、東方の博士の捧げもの、贈り物は、黄金,乳香、没薬というとても高価な物でした。
しかしマルチンのように、今必要としている人に物をあげること、助けをしてあげることが、本当の捧げものです。
「まことにあなた方に告げます。
あなた方が、これらの私の兄弟たちに、しかも最も小さいものたちのひとりにしたのは、私にしたのです。」マタイ25章40節